梅の特徴

歴史と気候に育まれた独自品種

若狭町(旧三方町)西田地区(旧西田村)の平太夫と助太夫の家にあった梅の木が福井梅の発祥で、その屋号から「平太夫梅」、「助太夫梅」と呼ばれていました。その後、明治時代に様々な品種改良が行われ、現在の「紅サシ」、「剣先」になったと言われています。

昭和36年に、美浜町久々子に園芸センター(現園芸研究センター)が設立され、ウメの本格的な試験研究が始まりました。当時、全国からウメの品種を集めていた中で、収穫量が多い樹が見つかり、昭和61年に「新平太夫」として品種登録されました。

昭和57年から県の育種事業が始まり、有望な品種同士が交配され、このときに約1,200本の苗木が作られました。このうち、「新平太夫」と「織姫」の交配から生まれた中から、収量性が極めて高く、早生(熟するのが早い)の「福太夫」が選抜され、平成17年に品種登録されました。

福井県で生まれた4品種は、いずれも自家結実性を持ち、自分の花粉で実を成らす(1本で実を成らす)ことができます。これは、花が咲く時期がまだ寒く、昆虫等の助けが得られない日本海側の気候だからこそ、受け継いできた特性であると言えます。

 

 

 

①「紅サシ」(べにさし)

その名の通り、「紅サシ」は実が熟してくると日当たりの良い部分が紅色を帯びます。
梅酒、梅干しに適しており、特に梅干しは肉厚でぽったりとした食感が特徴です。

種が小さい

通常、ウメの果実の重さの約10%が種ですが、「紅サシ」の種の重さは約6%と、他の品種と比べても格段に種が小さいことが分かります。
種が小さいということは、肉厚な梅干しに仕上がります。

皮が薄い

「紅サシ」の完熟果は皮が薄いのが特徴です。皮が薄いと食感が良く、口の中に皮が残りません。また、シソで染まりも良くなります。逆に、破れやすいことにもなりますので、梅干しを扱う際は注意が必要です。

酸が少なめで、味はまろやか

ウメは酸っぱいのが信条ですが、酸っぱすぎても食べにくいものです。「紅サシ」は、酸味の成分である有機酸がやや少なく、うまみ成分であるアミノ酸やカルシウム,カリウム,マグネシウムなどのミネラルを多く含んでいます。

 

 

②「剣先」(けんさき)

実の先端部分がやや尖っていることから名前が付きました。
早い時期から大玉になるため、福井梅のトップを切って出荷されます。
梅酒や梅シロップ等のジュース用途に適しています。

大玉で表面に光沢が出る

ウメの果実の表面には、毛じ(もうじ)と呼ばれる産毛のような毛が生えています。
収穫が近づくにつれて徐々に抜けて、表面に光沢が出てきます。
「紅サシ」と「剣先」は、毛じが特に薄く、光沢が強く出る品種です。

 

 

③「福太夫」(ふくだゆう)

果実はやや小ぶりですが、早生で収穫量が極めて多いです。
梅酒、梅干し両方に適しており、福井梅のニューフェイスとして期待されています。

果実が小ぶりで丸っこい

ウメ品種の多くは、ずんぐりした楕円形をしていますが、「福太夫」は円形をしています。
果実の大きさもやや小さめで、丸っこくてかわいらしい姿が、とても特徴的です。

熟すと黄色くなる

「福太夫」は他の品種とは異なり、樹に成っている状態から黄色くなっていきます。
青いウメには、クロロフィルという緑色の色素が多く残っており、熟してくると、このクロロフィルが分解されていきます。
さらに、収穫後に追熟させることで、分解が進みます。

 

 

④「新平太夫」(しんへいだゆう)

やや晩生の品種で、7月に入ってから収穫されます。
収穫量が極めて多く、主に塩漬け加工した白干梅(しらぼしうめ)として出荷されています。

梅干しには完熟ウメが最高

梅干し等の加工用途には、熟したウメを使うことが大事です。
特に完熟して落果したウメは、樹上完熟とも呼ばれ、品質は最高です。
塩漬けされたウメは、天日干しされます。
紫蘇等で染めていない状態を白干梅と呼び、樽に詰められて出荷されます。

収穫はネット収穫が便利

完熟落果を拾うためには、あらかじめネットを樹の下に敷いておきます。
虫が入らないように少し浮かしておくこともポイントです。
浮かしておくと、落果したウメが1か所に集まり、拾いやすくもなります。
ネット収穫は、手でもぐよりも約5倍の速さで収穫できるため、作業時間の軽減にもなります。

完熟して落果するのは7月に入ってから

「新平太夫」は晩生の品種で、完熟して落果する時期が遅いです。
年にもよりますが、果実が落果するのは7月に入ってからです。
「紅サシ」の収穫が落ち着いてきたころに落果するので、収穫作業の分散ができます。